アンデシュ・ハンセンさん著、久山葉子さん訳
『ストレス脳』を読みました。

『スマホ脳』著者による、脳科学の観点からの最新刊
本書の著者のアンデシュ・ハンセンさんは
2021年にヒットした『スマホ脳』の著者であり、
精神科医として勤務しながら
執筆活動やテレビ番組のナビゲーターなども務め、
幅広く活躍しています。
現代では、4人に1人が一生のうちに一度は
経験すると言われているうつや強い不安などの
精神的な不調。
これほど多くの人が苦しむことについて、
著者が精神科医になった理由でもあり、
精神科医になって以来ずっと考えてきた
テーマであったとのこと。
本書も脳科学の観点から、
脳の中でどのようにうつや不安がつくられ、
なぜつくられていくのかを解説されており、
いわば「脳の処方箋」としてまとめられた
一冊となっています。
本書の章構成
日本の読者の皆さんへ
まえがき―なぜ人は不安から逃れられないのか?
第1章 私たちはサバイバルの生き残りだ
第2章 なぜ人間には感情があるのか
第3章 なぜ人は不安やパニックを感じるのか
第4章 人はなぜうつになるのか
第5章 なぜ孤独はリスクなのか
第6章 なぜ運動でリスクを下げられるのか
第7章 人類の歴史上、一番精神状態が悪いのは今なのか?
第8章 なぜ「宿命本能」に振り回されてしまうのか?
第9章 幸せの罠
あとがき
10の最も重要な気づき
謝辞
訳者あとがき
読書中のツイート
不安、ストレスは「生きる」を守るためのサイン
本書で著者はうつや不安について、
「人間が生き延びるために備えた防御のメカニズム」
「脳が最優先するのは何しろ生き延びること」
と書かれています。
今でこそ医療の進化や経済の発展などで
快適な暮らしを手に入れた人間。
飢餓や感染症、人間同士の暴力的な争いなどで
命を落とすことは大きく減りましたが、
「生きる」ことが最優先課題であった時代が
人類の長い歴史においてはほとんどであり、
そうして現代を迎えてきました。
つまり、ネガティブな感情や苦痛な気持ちは
生きることに対する脅威がそこにあり、
回避を促すために出されているサインで
あるということです。
本書では各章でさまざまなテーマで
丁寧に解説されていますが、
まずは生きることを守り抜こうとして
働いているのが脳であり、
ストレスや不安、うつなどの反応を起こす。
本文にも「知識こそが鍵」と書かれており、
まずはこのことを知ることによって
ストレスや不安などに対する見方が
変わってくるのだと思います。
ストレスや不安を感じることは
その時はたしかに苦しいですが、
これが生きるために必要な反応だと
わかっていれば、その苦しみはあっても
絶望的なものにはならないのでは
ないかと思います。
なんか安全じゃない。
そこに気づくところからはじめて、
それがどういうことなのかを
分解して考えてみるのもいいかもしれません。
自然とのつながりを感じて
自然の中で自分が「生きている」ことを
ゆっくりと感じながら散歩して考え、
自分の感情を外から眺めて
言語化してみるのもいいですよね。
ストレスや不安。
できれば避けたいものではあるけれど、
脳の働きの観点から知ることができた。
そして、自分がそこに「生きている」を
ちゃんと感じることを大事にして
これからも生きていこうと思えた。
そうした収穫を得られた、
本書の読書だったように思います。